エネルギー構成の視点 #13
屋根が足りなければ、再エネ導入は止まるのか

再エネを増やしたい。でも、屋根に載せられる量には限りがある
企業が太陽光発電を検討するとき、最初の候補になりやすいのが、自社の工場や倉庫、事業所などの屋根です。
発電した電気をその場所で使う自家消費型の太陽光は、企業が再エネを取り入れる代表的な方法の一つです。資源エネルギー庁でも、自家消費型太陽光やオンサイトPPAなど、需要地で再エネを活用する取り組みが紹介されています。[1]
ただし、ここで一つ問題があります。
電気をたくさん使う企業ほど、必要な発電量に対して屋根が足りないことがあるということです。
屋根の面積には限りがあります。さらに、
- 屋根の形状
- 建物の強度
- 方角や日射条件
- 空調設備など既存設備との干渉
- メンテナンス動線
- 建物の使用予定期間
などによって、実際に太陽光パネルを設置できる範囲は変わります。
つまり、
再エネをどれくらい使いたいか
と
自社敷地内でどれくらい発電できるか
は、必ずしも一致しません。
今回は、この差をどう考えるかを見ていきます。
モデル企業――電気は使う。でも、屋根だけでは足りない
ある製造業のモデル企業を考えてみます。工場では平日の昼間を中心に、多くの電気を使用しています。
#11、#12で見てきた考え方からすると、昼間需要が大きいため、屋根上太陽光との相性を検討しやすい施設です。
ところが、屋根を調べてみると、使用電力量に対して設置できる太陽光発電の規模は限られていました。
屋根上太陽光を導入しても、必要な電力の一部しか発電できません。
このとき、
「屋根が足りないから、ここまで」
と考える方法もあります。
しかし、エネルギー構成という視点では、少し違った見方ができます。
屋根上太陽光を「再エネ導入のすべて」と考えるのではなく、構成をつくる一つの要素として考える方法です。
まずは、使える場所を確認する

屋根以外にも、敷地内に発電設備を設置できる場所が残っている場合があります。
たとえば、
- 駐車場
- 遊休地
- 別棟の屋根
- 倉庫
- 将来建設する建物
などです。
駐車場であれば、ソーラーカーポートという考え方もあります。国の再エネ施策でも、屋根以外の設置手法としてソーラーカーポートなどが取り上げられています。[1]
ただし、どの場所でも自由に設置できるわけではありません。
構造、土地利用、施工条件、系統接続、維持管理などを確認する必要があります。
ここで重要なのは、
「まず太陽光設備を決めてから場所を探す」のではなく、「利用できる場所を確認してから、そこで何ができるかを考える」
という順番です。
それでも足りなければ、発電場所を需要地から離して考える
自社敷地内だけでは十分な発電量を確保できない場合、次に考えられるのが、需要地とは別の場所で再エネを確保する方法です。
ここから、エネルギー構成の選択肢が広がります。
自己託送
自己託送は、自ら設置・運用する発電設備などで発電した電気を一般送配電事業者の送配電ネットワークを利用して、別の場所にある自社工場などへ送る仕組みです。[2]
たとえば、
発電に適した土地はあるものの、そこでは電気をあまり使わない
一方、離れた工場では多くの電気を使っている
という場合に、検討候補になることがあります。
ただし、自己託送には発電設備の設置・維持・運用主体や需要家との関係などの要件があります。単に「遠くに太陽光を設置すれば使える」という制度ではありません。[3]
そのため、実際の検討では制度要件、発電計画、需要計画、送配電条件などを確認する必要があります。
オフサイトから再エネを調達する方法もある
もう一つは、自社で発電設備を持つことだけに限定せず、外部から再エネ電力を調達する考え方です。
代表的な方法の一つに、オフサイトPPAがあります。
オフサイトPPAでは、需要地から離れた場所の再エネ発電設備で発電された電気を系統と小売電気事業者などを介して需要家へ供給する形があります。資源エネルギー庁も、企業などの需要家が遠隔地で開発された再エネ電気を調達する方法として紹介しています。[4]
この場合、考える対象は「設備」だけではありません。
- 発電場所
- 発電事業者
- 小売電気事業者
- 契約期間
- 電力価格
- 環境価値
- 需要との対応
- 契約終了時の扱い
など、契約や事業スキームもエネルギー構成の一部になります。
つまり、屋根から外へ視点を広げると、
「何を設置するか」から「どこで発電し、どのように電気を届けるか」へ 検討範囲が広がっていきます。
ESSを増やしても「屋根不足」そのものは解決しない
ここでESSについても整理しておきます。
屋根上太陽光だけでは必要な再エネ量を確保できないとき、
「では、大きなESSを置けばよいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、ESSは基本的に、電気を発電する設備ではありません。
電気を充電し、必要な時間へ移して使う設備です。
たとえば、
昼間に太陽光の余剰がある
↓
ESSへ充電する
↓
夕方や夜に放電する
という使い方が考えられます。
これは#12で見た「使う時間」の調整には役立ちます。
一方、年間を通じて発電できる再エネそのものが不足している場合、ESSを大きくしただけでは、その不足分のエネルギーは生まれません。
ここは、
発電量を増やす問題
と
発電した電気を使う時間を調整する問題
を分けて考える必要があります。
「屋根上太陽光+何か」という考え方
ここまで整理すると、屋根が足りない企業では、一つの方法ですべてを賄う必要はないことが見えてきます。
たとえば、
構成例A
屋根上太陽光+系統電力
まず自社で使いやすい範囲まで太陽光を導入し、不足分は従来の電力調達で補う。
構成例B
屋根上太陽光+ESS+系統電力
昼間の太陽光を活用しながら、一部をESSで時間移動する。
構成例C
屋根上太陽光+離れた発電所+自己託送
敷地内で足りない発電量を条件を満たす別の発電地点から補う。
構成例D
屋根上太陽光+オフサイト型の再エネ調達
自社敷地内の発電と、外部で開発された再エネ電力の調達を組み合わせる。
もちろん、これらがすべての企業で利用できるわけではありません。
需要規模、土地、系統、契約、設備、コスト、運用体制などによって候補は変わります。
重要なのは、
屋根上太陽光だけで100%を目指すことを前提にしない ことです。
発電できる場所と、電気を使う場所を分けて見る

企業の再エネ構成を考えるとき、次の2つを分けて整理すると分かりやすくなります。
電気を使う場所
- 工場
- 倉庫
- オフィス
- 店舗
- 複数の事業所
電気をつくれる場所
- 自社屋根
- 駐車場
- 自社敷地
- 別拠点
- 離れた発電候補地
- 外部事業者の発電所
この2つが同じ場所にあれば、自家消費型太陽光は比較的分かりやすい構成になります。
しかし、需要量が増えたり、設置場所が不足したりすると、
「発電場所」と「需要場所」をどうつなぐか という問題が出てきます。
自己託送やオフサイト型の電力調達は、その段階で登場する選択肢です。
屋根の大きさだけで、再エネ導入の上限を決めない
企業によって、
- 電気の使い方
- 建物
- 土地
- 拠点数
- 発電できる場所
- 契約条件
は異なります。そのため、
「この面積なら、この設備」
と単純に決めるのではなく、
まず需要を確認し、
次に使える場所を調べ、
自社敷地内でできることと、外部まで視野を広げた場合にできることを整理する。
その順番で構成を考えることが重要です。
屋根が足りないことは、一つの制約です。
しかし、制約が分かること自体が、次の構成候補を考える出発点にもなります。
まとめ
屋根上太陽光は、企業が再エネを導入する代表的な方法の一つです。
しかし、電力需要が大きい企業では、自社の屋根だけで必要な発電量を確保できないことがあります。
その場合は、
- 屋根や敷地でどこまで発電できるか
- 駐車場や別棟などを利用できるか
- 別の場所で発電できるか
- 自己託送を利用できる条件があるか
- 外部から再エネを調達する方法があるか
- ESSで時間を調整する必要があるか
と、視点を広げていきます。
ESSは時間を調整する設備であり、発電量不足そのものを埋める設備ではありません。
だからこそ、
発電する場所、電気を使う場所、使う時間、電気を届ける方法
を一つの構成として見る必要があります。
「屋根にどれだけ載るか」で終わらず、
その企業の条件の中で、再エネをどう組み合わせられるかを考える。
それが、エネルギー構成のもう一つの視点です。
次回#14では、設備の中でもESSに注目し、
「ESSを入れるか」ではなく、「ESSに何をさせるのか」
というところから考えていきます。
関連ページ
出典・参考資料
[1]資源エネルギー庁「自家消費型・需要側の取組」
自家消費型太陽光、オンサイトPPA、ソーラーカーポート等の参考。
[2]資源エネルギー庁「自己託送に関するQ&A|自己託送とは」
自己託送の基本的な制度説明。
[3]資源エネルギー庁「自己託送に関するQ&A」
自己託送の利用要件等の確認用。
[4]資源エネルギー庁「日本の多様な再エネ拡大策で、世界の『3倍』目標にも貢献」
オフサイトPPAの基本的な考え方の参考。
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