蓄電池部材ランキング #02

蓄電池の「部分品」は、どこから来ているのか?
HS8507.90で見る輸入相手国ランキング

蓄電池は、完成した電池セルやコンテナだけで成り立っているわけではありません。
正極と負極を隔てるセパレーター、電極を構成するシート、接続部品など、さまざまな部分品が組み合わされることで、一つの蓄電池が構成されています。

では、日本が輸入している「蓄電池の部分品」は、どの国・地域から来ているのでしょうか。
今回は、財務省貿易統計をもとに整理された2023年のデータから、HSコード「8507.90」に分類される蓄電池部分品の輸入動向を確認します。
あわせて、貿易統計上の「部分品」と、蓄電池業界で一般的に使われる「部材・部素材」という言葉の違いについても整理します。

※本記事のランキングは、貿易統計上「蓄電池の部分品」として分類された品目を対象としています。系統用蓄電池向け、リチウムイオン電池向け、特定部材向けだけを抽出した統計ではありません。

前回は「リチウムイオン蓄電池」の輸入動向を確認

「蓄電池部材ランキング #01」では、リチウムイオン蓄電池そのものの輸入動向を入口に日本の蓄電池サプライチェーンを確認しました。
今回の#02では、その一段内側に入り、貿易統計上の「蓄電池の部分品」を見ていきます。

前回の記事はこちらです。

蓄電池部材ランキング #01 >
「系統用蓄電池を支える部材は、どこから来ているのか? 輸入統計で見る蓄電池サプライチェーン」

蓄電池の「部分品」とは

今回確認する統計品目は、HSコード「8507.90」です。

統計品目品目名今回の扱い
8507.60リチウム・イオン蓄電池#01で確認した蓄電池本体側の統計
8507.90蓄電池の部分品#02で確認するランキング対象
その他の品目正極材料、化学材料など蓄電池用途でも別分類になる場合がある

HS8507.90には、蓄電池に専ら、または主として使用される部分品が含まれます。
ただし、系統用蓄電池を構成するPCS、BMS、ケーブル、空調設備、消火設備などが、すべて8507.90に含まれるわけではありません。
また、正極材、負極材、電解液などの部素材も、成分や加工状態によって別の品目に分類される場合があります。
そのため、今回のランキングは「系統用蓄電池を構成する全部材のランキング」ではなく、貿易統計上「蓄電池の部分品」として輸入された品目のランキングです。

2023年の蓄電池部分品輸入額は683億円

財務省貿易統計をもとにした公開データによると、2023年の蓄電池部分品の輸入額は683億円でした。
前年比では140.9%増となり、4年連続で増加しています。
また、確認できる1990年以降の統計では、2023年が最大の輸入額となっています。

確認項目2023年の数値
輸入金額683億円
前年比140.9%増
増加状況4年連続で増加
輸入相手31か国・地域

この増加が系統用蓄電池だけによるものとは限りません。
HS8507.90には、車載用、産業用、定置用など、さまざまな用途の蓄電池部分品が含まれる可能性があります。
それでも、蓄電池の完成品だけでなく、その内側を支える部分品の輸入規模が大きくなっていることは、サプライチェーンを見るうえで注目すべき動きです。

参考元:
財務省貿易統計をもとにGD Freak!が作成した「蓄電池の部分品の輸入動向 HS850790

蓄電池部分品の輸入相手国ランキング

2023年の輸入相手は31か国・地域でした。
輸入額683億円のうち、中国からの輸入が85.9%を占めています。次いで米国が4.7%となり、上位2か国だけで全体の90%を超えています。

2023年 蓄電池部分品の輸入相手国シェア

順位国・地域輸入額構成比
1位中国85.9%
2位米国4.7%
その他9.4%

中国からの輸入が突出しており、蓄電池部分品として輸入申告された品目の多くが、特定の国に集中していることが分かります。
ただし、この構成比だけで、日本国内の系統用蓄電池に使われている部分品の85.9%が中国製であるとは判断できません。
統計が示しているのは、2023年にHS8507.90として日本へ輸入された貨物の金額構成です。

参考元:
財務省貿易統計をもとにGD Freak!が作成した「2023年 輸入相手国のシェア

輸入量は13,094トン

2023年の蓄電池部分品の輸入量は、13,094トンでした。
前年比では67.4%増となり、6年連続で増加しています。
輸入額と同様に確認できる1990年以降の統計では、2023年が最大の輸入量となっています。

確認項目2023年の数値
輸入量13,094トン
前年比67.4%増
増加状況6年連続で増加

輸入額の前年比140.9%増に対し、輸入量は67.4%増となっています。
金額と重量の伸び方には差がありますが、ここから個別部材の単価上昇や製品構成の変化を直接断定することはできません。
輸入される部分品の種類、加工度、用途、価格、為替など、複数の要因が影響するためです。

記事では「輸入額と輸入量の両方が増加した」という範囲で確認するのが適切です。

8507.90には、どのような部分品が含まれるのか

HS8507.90は「蓄電池の部分品」という広い分類です。
税関が公開している事前教示回答事例には、8507.90に分類された具体例があります。

蓄電池用セパレーター

セパレーターは、蓄電池の正極と負極を隔てる薄い膜です。
正極と負極の直接接触を防ぎながら、イオンを通過させる役割を持ちます。
税関の分類事例では、リチウムイオン電池などの二次電池に専ら使用されるセパレーターが、蓄電池の部分品として8507.90に分類されています。

負極用の黒鉛塗布銅箔

リチウムイオン蓄電池の負極に使用するため、銅箔の表面に黒鉛を塗布したシートも、8507.90に分類された事例があります。
この事例では、リチウムイオン蓄電池に専ら、または主として使用される部分品と認められたことが分類理由として示されています。

部分品の例主な役割分類例
蓄電池用セパレーター正極と負極の隔離、電解液の保持、イオンの透過8507.90-000
黒鉛を塗布した負極用銅箔リチウムイオン蓄電池の負極材料8507.90-000

これらは8507.90に含まれる可能性がある部分品の具体例です。
ただし、8507.90に輸入申告された全貨物の内訳が、セパレーターと負極用銅箔だけで構成されているという意味ではありません。

「部分品」と「部材・部素材」は同じではない

蓄電池業界では、正極材、負極材、電解液、セパレーター、集電体などをまとめて「部材」や「部素材」と呼ぶことがあります。
一方、貿易統計では、貨物の成分、加工状態、形状、用途などをもとにHSコードが決まります。
そのため、蓄電池に使用する材料であっても 必ず8507.90に分類されるわけではありません。
税関の事前教示回答事例では、リン酸鉄リチウムと炭素から成るリチウムイオン電池用正極材料が、8507.90ではなく「3824.99-999」に分類された例があります。

蓄電池関連品分類例
蓄電池用セパレーター8507.90-000
黒鉛を塗布した負極用銅箔8507.90-000
LFP系リチウムイオン電池用正極材料3824.99-999

つまり、「蓄電池部分品の輸入相手国ランキング」と「蓄電池に関係する全部材の輸入相手国ランキング」は同じではありません。
複数のHSコードを横断しなければ、正極材、負極材、電解液、セパレーターなどを含むサプライチェーン全体は見えてきません。

今回の#02では、まず8507.90という一つの統計分類に焦点を当てています。

このランキングから分かること

今回のランキングから確認できるのは、以下の内容です。

・2023年にHS8507.90として輸入された貨物の金額
・蓄電池部分品の輸入相手国・地域
・輸入額に占める上位国の構成比
・蓄電池部分品として輸入された貨物の重量
・輸入先の集中度
・前年との増減傾向

特に中国からの輸入額が85.9%を占めていた点は、輸入相手国の集中度を考えるうえで分かりやすい数字です。

このランキングだけでは分からないこと

一方、今回の統計だけでは、以下の内容は分かりません。

・系統用蓄電池向けだけの輸入額
・リチウムイオン蓄電池向けだけの輸入額
・セパレーターだけの国別構成比
・負極用銅箔だけの国別構成比
・正極材、電解液などを含む全部材の輸入構成
・個別プロジェクトで採用されたメーカーや製造国
・輸入された部分品の品質や性能
・最終的な製品の原産国

「中国85.9%」という数字だけを切り出し、系統用蓄電池の全部材や個別設備の調達先を示す数字として扱わないことが重要です。

なぜHSコードを確認する必要があるのか

ランキング記事では、数字だけでなく「何を数えているか」を確認する必要があります。
同じ蓄電池関連品であっても 完成した電池、専用部分品、化学材料、電力変換機器では、それぞれ異なるHSコードが使われる場合があります。

例えば、系統用蓄電池設備を構成する要素には、以下のようなものがあります。

・電池セル
・モジュール、ラック
・セパレーター
・正極材、負極材
・PCS
・BMS
・変圧器
・配電盤
・ケーブル
・空調設備
・消火設備
・コンテナ筐体

これらをすべて「蓄電池の部分品」として一つの統計にまとめることはできません。
そのため、サプライチェーンを確認する際には、対象品目とHSコードの範囲を明確にする必要があります。

系統用蓄電池は、多くの部材と設備で構成される

系統用蓄電池は、大型コンテナを設置するだけの設備ではありません。
電池セルや部分品に加え、PCS、変圧器、受変電設備、監視制御、空調、消火、通信、系統接続など、多くの要素によって構成されています。
輸入統計は、こうした設備全体の一部分を切り取ったものです。
それでも、部材や部分品がどの国から入り、どの程度の規模で動いているかを見ることで、蓄電池を取り巻く産業構造の一端を確認できます。
設備の容量や価格だけでなく、その背景にある部材、製造、輸入、系統接続、運用まで含めて考えることが重要です。

まとめ

今回は、HS8507.90に分類される「蓄電池の部分品」の輸入動向を確認しました。

ポイントは以下のとおりです。

・2023年の輸入額は683億円
・輸入額は前年比140.9%増
・輸入相手は31か国・地域
・中国からの輸入が85.9%を占めた
・米国は4.7%、その他は9.4%
・輸入量は13,094トン
・HS8507.90にはセパレーターや負極用銅箔などの分類例がある
・正極材料など、蓄電池用途でも別のHSコードに分類されるものがある

今回のランキングで重要なのは、順位だけではありません。
「蓄電池の部材」という一つの言葉の中にも、統計上は異なる分類があり、一つのHSコードだけではサプライチェーン全体を捉えられないという点です。
今後の「蓄電池部材ランキング」でも、公開統計や制度資料をもとに、蓄電池を支える材料・設備・地域構成を順次整理していきます。

参考資料

・財務省「貿易統計」
・税関「輸入統計品目表 第85類」
・税関「事前教示回答事例 蓄電池用セパレーター」
・税関「事前教示回答事例 銅のはく(リチウム・イオン蓄電池の電極用)」
・税関「事前教示回答事例 リチウムイオン電池用正極材料」
・GD Freak!「蓄電池の部分品の輸入動向 HS850790」

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データの見方について

本シリーズでは、貿易統計上の品目分類をもとに輸入相手国や構成比を整理したものです。統計上の品目と、蓄電池に実際に使用される材料・部品の範囲が完全に一致するとは限りません。
掲載データは、個別製品の原産国、製造事業者、品質、性能、調達先または最終用途を示すものではありません。


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本記事は、公開資料をもとに生成AIを情報整理、記事構成および文章作成の補助に利用し、株式会社サンパワーが出典、数値、内容、表現を確認・編集しています。
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