再エネ100%の現実 #02

モデルビル一棟は、いつ・どれだけ電気を使うのか

再エネ設備を選ぶ前に確認したいのが、建物の電力使用状況です。
太陽光パネルを何枚設置するか、ESSを何kWhにするかを先に決めても、電気を使う時間や量と合わなければ、設備を十分に活かせない可能性があります。

ビルでは何に電気を使っているのか

事務所ビルでは、主に次のような設備がエネルギーを使用します。

  • 空調
  • 換気
  • 照明
  • エレベーター
  • 給湯
  • OA機器
  • サーバーや通信設備
  • 防犯・監視設備

オフィスビルでは、空調、照明・コンセント、換気、昇降機など、複数の設備が時間帯によって異なる動きをします。特に業務時間帯はエネルギー消費が大きく、夜間・休日にもベースロードが残ります。[1]

モデルビルAの一日

モデルビルAは、平日の午前8時頃から社員が出勤し始め、9時から18時までを主な稼働時間とします。

解説用に代表的な平日の電力需要を次のように仮定します。

時間帯主な使用設備想定需要
0時~6時サーバー、防犯、待機設備約60kW
8時頃空調の起動、照明、OA機器約180kW
10時~16時通常業務、空調、照明約300kW
18時頃残業、共用設備約180kW
22時以降サーバー、防犯、待機設備約60~80kW

実際の需要は一定ではありません。夏や冬には空調負荷が増え、会議室の利用、人員数、休日、設備の稼働状況によっても変わります。

夜間にも需要は残る

事務所の照明が消えても、建物の電力使用量がゼロになるとは限りません。
サーバー、通信機器、防犯、非常設備、換気、冷蔵設備などが稼働を続けるためです。モデルビルAでは、夜間にも約60kWの基礎負荷が残ると仮定します。
この60kWを10時間使用すれば、夜間だけで600kWhになります。昼間の太陽光発電量が多くても、夜に使う電力をどう確保するかが課題になります。

年間使用量だけでは見えないこと

年間90万kWhという数値だけを見ても、必要な太陽光やESSの構成は決まりません。

同じ年間90万kWhでも、昼間に集中して使う工場と、24時間稼働する施設では、適切な構成が異なります。
必要なのは、少なくとも30分単位または1時間単位で、次の情報を整理することです。[2]

  • 曜日別の需要
  • 季節別の需要
  • 最大需要電力
  • 夜間の基礎負荷
  • 休日の需要
  • 一時的に停止・移動できる負荷

建物のエネルギー対策では、どこで、どの程度エネルギーを消費しているかを把握し、削減対象の優先順位を決めることが重要です。

つくる前に減らせる需要を確認する

再エネ100%に近づける方法は、発電設備を増やすことだけではありません。
空調の設定、照明制御、断熱、設備更新、稼働時間の調整によって需要を減らせれば、必要な太陽光やESSの容量も小さくできます。
再エネ構成を考える前に省エネと運用改善を確認することが重要です。

生きものの視点

モデルビルAの一日は、人間の活動時間だけで決まっているわけではありません。
朝には鳥が動き、昼には昆虫が活動し、夜には夜行性の生きものが周辺を利用します。

建物が24時間稼働する場合、照明や設備の運用も周囲の環境と完全に切り離されたものではありません。エネルギーの使い方を見直すことは、無駄な夜間照明や設備稼働を確認する機会にもなります。

まとめ

再エネ設備を考える出発点は、発電量ではなく需要です。
いつ、どこで、何に、どれだけ電気を使っているのか。需要の形を把握することで、太陽光、ESS、自己託送などの役割が見えてきます。

出典・参考資料

[1]一般財団法人省エネルギーセンター「オフィスビルの省エネルギー/オフィスビルの省エネのポイント」参照2026年8月
[2]資源エネルギー庁「スマートメーターのオプトアウト制度に関するQ&A」ほか 参照2026年8月


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